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『IN BETWEEN 国際デザインプロジェクト』/ 伸縮タタミ

Solution to the problem (応募案設計主旨より)

生活空間における問題点

賃貸住宅
現在の都市型賃貸住宅は、そこで生活する都市居住者の多様なライフスタイル、ライフステージに対応できていない。その原因として考えられるのは、画一的な住宅供給システムの体制である。デベロッパーによって、n-DK,n-LDKのような類型的に形式化された住戸の供給が行われ続けている。この供給方式は、賃貸住宅が供給の時点で居住者を特定できず、また居住者の住戸使用期間も様々であるという状況から派生した結果である。生活空間は本来、そこで生活する人に対応して形成されるものであるが、現実の賃貸住宅の供給は生活者を類型化した枠組みで規制している。そのために、生活の可能性も制限されている。
和室の必要性
生活者像の不明瞭な条件での賃貸住宅の供給という状況において、興味深い現象がある。
それは、デベロッパーが住宅供給の方針として主に家族世帯が住むと設定されている3LDK以上の住戸には、必ず和室を設けるということである。これは、和室が居住者の一般的な必要性として存在価値があるということを示している。
定型化した畳敷き
和室は、畳が敷き詰められた部屋であり、日本の伝統的建築において発生したものである。
日本社会の近代化以前には居住スペースは畳敷きの和室によって占められていたが、近代におけるライフスタイルの西洋化の流入とともに、生活空間に占める和室の割合も次第に減少し、現在に至っている。賃貸住宅の和室は、それが現在まで継承されている意味深いものと考えられる。しかし本来、この畳敷きは、板の間に自分の居場所を形成し、時間と状況に応じて畳の敷き詰め方を変化させる柔軟性、そして、座具としての畳それ自体が持つ堅さや柔らかさといった快適性を内包していたが、現在の和室の畳敷きにはそのような柔軟なシステムは存在しない。畳敷きのもつ本来の意味は剥奪され、形式化、形骸化された姿で現象しているのである。
記憶された身体感覚
和室の特殊性として靴を脱ぎ、スリッパも脱いだ素足での生活が挙げられ、畳敷きはまさにこの身体感覚に対応した床材として、日本の文化で育まれて来たものである。和室に素足で入り、畳の上で座り込み、寝転ぶ。西洋化された生活の中で、日本人としての身体感覚が呼び起こされる瞬間である。
生活の多様性
しかし、現実を見てみると賃貸住宅の和室は家具で溢れている。しかも、その中に置かれている家具は本来の座り込んでのライフスタイルとはまったく無関係に、椅子や机や棚といった靴を履いた生活に対応した家具で溢れている場合も多い。畳の上に絨毯が敷かれ、スリッパで生活する場合もある。高齢者世帯では車椅子の利用も考えられる。
現在の和室は賃貸住宅に住む人々のライフスタイルやライフステージ、さらには居住者の入れ替わりといった状況に対応できていない。

以上のような問題点を、調停し解決するために、
賃貸という供給方式の中で、和室の潜在力を引き出し、生活空間の可能性を誘発するシステムを提案する。

解決のプロセス

1.既存のシステムの利用
畳は天然繊維によって編まれ、層状の断面構成をした素材であり、畳を構成する素材は、消耗に応じて相互に取り替え可能である。そして、その大きさは人がひとり占有できるスペース(900mm×1800mm)で身体の尺度を備えている。
また、和室は4.5畳間、6畳間、8畳間というように、畳一枚分を基準に部屋の大きさが決められているが、その枠内において敷き方に可変性があった。伝統的には、部屋の用途や行事に応じて敷き方が決められていた。
このような畳敷きのシステムをそのまま利用する。

2.畳と家具の融合した基本モジュール
基本モジュールは、以下の4つの特徴をによって説明できる。
層状構成
皮膜の層状構成は取り替え(張り替え)可能性を指示していて、新素材が今後開発されたときには更新可能である。また、上層ほど身体の皮膚感覚に近く、技術的によりよい心地よさ、伸縮性と強度が求められる。
自在性
自らの気分や必要性そして、快適性に応じて自由に形を調整、創造できる。
これは、空気によって膨らませることのできるエアーチューブを皮膜の間に挿入することで可能である。
このエアーチューブの大きさは生活者の好みに応じて適宜対応できる。
身体性
座る、座り込む、寝転ぶ、縮こまる、伸び上がる、仰け反る、うつ伏せになる、もぐり込むといった多様な身体性を可能にする。基本モジュールは人と物との新しい関係を生み出す。
機能性
畳、座布団や座卓、テーブルや椅子、収納家具がもつ機能が基本モジュールには融合されている。生活者の必要性に応じて、機能が見い出される。あるいは、基本モジュールの形態が人に意外な刺激を与え、新たな機能を引き出すこともあり得る。

3.生活スタイルの拡張性
基本モジュールの組み換えにより、多様な生活環境が生み出される。和室1畳分のスペースから部屋全体に至るまでの基本モジュールの適応により、従来の家具が支配するスペースや機能をより柔軟なシステムへと拡張できる。また、基本モジュールの複合化は、連鎖反応的に生活の場所を形成し、そこで多様な生活が展開される。

4.繊維素材の可能性
基本モジュールにおいては、全ての素材が繊維で構成されている。要求される性能は柔軟性や強度、快適性、交換しやすさや扱いやすさ、資源としての更新性や廃棄物としての社会性で、それらの性能は使用される繊維材料にミクロなレベルで組み込まれる。皮膜は有機系の新しい合成繊維(新合繊,shingosen)が使用される。繊維組織は複合物(hybrid)として多層構造をもち、利用される部位(Fiber layer01,02,03)に応じて繊維の組み合わせや混合率が制御される。
また、エアーチューブは生分解性(biodegradable)ポリエステル繊維によってつくられる。このチューブには転用可能(空気を抜いてゴミ袋に利用できる)な配慮が素材レベルで制御されていて、土中の微生物によって分解され得る。

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